特集|線維筋痛症・慢性疲労症候群(ME/CFS)と、働き方

Record記録 読了 9分

痛みの言葉には、医療側の一覧がある — 線維筋痛症の当事者の言い方と、マギル痛み質問表を並べた

痛みの言葉を医療側が整理した「マギル痛み質問表」と、線維筋痛症の当事者がブログや note、X に書いた痛みの言い方を並べた。

  • なみのま編集部調べもの・構成
机の上に開いたノート。ページには波線だけが並んでいる。横に鉛筆と、扇形に重ねた白いカードがあり、1枚の端に小さな付箋が付いている
イラスト|編集部(AI生成)
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なみのまは、線維筋痛症と慢性疲労症候群(ME/CFS)とともに働く編集長のメディアです。この記事では、編集部が調べたことをまとめています。

In 3 lines

  • 医療側には、痛みの質を表す言葉を整理した一覧(マギル痛み質問表)がある。20のまとまりに78の語。当事者の編集長も、調べるまで知らなかった。
  • 当事者の言い方の多く(刺す・裂く・つぶす・焼ける・重い)は、一覧の語でかなり言えた。
  • 血管の中をガラスが流れる、風船が膨らみ続ける、鉛の鎧を着ている、は一覧に入りきらない。場所や動きや時間が重なっている。

線維筋痛症の痛みは、外からは見えません。検査の数値にも出にくいので、どんな痛みなのかは、言葉で伝えるしかありません。
その痛みの言葉を、医療側が整理した一覧があります。「マギル痛み質問表」と呼ばれるものです。
編集長は線維筋痛症の当事者ですが、この一覧があることを、調べるまで知りませんでした。
当事者が自分で書いた痛みの言い方を集めて、この一覧と並べてみました。

医療側で整理された、痛みの言葉

マギル痛み質問表(MPQ)は、痛みの質を言葉で表すための質問票です。
日本ペインクリニック学会の用語集には、その痛みの言葉の日本語訳が載っています。20のまとまりに、78の語が並んでいます1。

マギル痛み質問表の痛みの言葉(一部。左の見出しは編集部が付けたもの)
種類言葉(日本語訳)
刺すちくりとする/千枚通しで押し込まれるような/刃物で突き刺されるような
裂く鋭い/切り裂かれるような/引き裂かれるような
つぶす圧迫されるような/ひきつるような/押しつぶされるような
熱い熱い/灼けるような/やけどしたような
皮膚ひりひりする/むずがゆい/蜂に刺されたような
重いじわっとした/うずくような/重苦しい
触れるさわられると痛い/つっぱった/割れるような
締めるきゅうくつな/しびれたような/しぼられるような

これを短くした版(SF-MPQ-2)の日本語版もあります。22項目を4つに分け、過去1週間の痛みを、項目ごとに0(なし)から10(考えられる最悪の状態)の11段階で答える形です2。

SF-MPQ-2 日本語版の4つの区分(項目は一部)
区分項目数項目の例
持続的な痛み6ずきんずきんする痛み
うずくような痛み
重苦しい痛み
間欠的な痛み6刃物でつき刺されるような痛み
割れるような痛み
電気が走るような痛み
神経障害性の痛み6焼けるような痛み
軽く触れるだけで生じる痛み
感覚の麻痺/しびれ
感情的な表現4疲れてくたくたになるような
拷問のように苦しい

SF-MPQ-2 は、原作者と研究班が著作権を持つ質問票です。ここでは項目の一部だけを紹介しています。22項目の全文と作成の経緯は、日本語版をつくった研究者の論文で読めます。

当事者の言い方は、一覧のどこに入るか

編集部は、2026年9月に、note・アメブロ・はてなブログなどの個人ブログと、X の直近1か月ほどの投稿を検索し、線維筋痛症の当事者本人が自分の痛みを言い表している文を集めました。見つかったのは71人・199件です(調べた範囲は、記事の最後の「この記事について」に書いています)。
ただし、これは探した範囲で見つかった数です。当事者の言い方は、探せばもっとあるはずです。
集めた中から、同じような言い方がいくつも見つかったものを中心に、一例ずつ選んで一覧の語と並べます。表の言い方は、それを書いた人ひとりだけのものではありません。編集長の言い方も、同じように並べています。「近い語」は編集部の判断で、( )の中は、上のマギル痛み質問表の表の「種類」です。

当事者の言い方(一例)と、マギル痛み質問表の近い語
当事者の言い方(原文・一例)マギル痛み質問表の近い語(種類)
「突然ナイフで刺されるような痛み」刃物で突き刺されるような(刺す)
「全身をアイスピックで引き裂かれるような痛み」引き裂かれるような(裂く)
「万力で握り潰されるような痛み」押しつぶされるような(つぶす)
「全身の筋肉を絞られるような/強い痛みを感じました。」しぼられるような(締める)
「皮膚が火傷したようなヒリヒリとした感覚」やけどしたような(熱い)
ひりひりする(皮膚)
「誰かがのしかかってきたような重だるさ」重苦しい(重い)
「まるで/やすりで体を擦られている/かのような痛み」(服を脱ぐときの擦れ)さわられると痛い(触れる)
「強い力でずっと握りしめていたときみたいにこわばってガチガチになった痛み」つっぱった(触れる)が少し近い
「関節が軋む痛み」近い語なし
「血液の中にガラスの破片が流れているようなチリチリとした痛み」近い語なし
「体の中で、痛みの風船が膨らみ続けている感じ」近い語なし。割れるような(触れる)が少しだけ近い
「24時間鉛の鎧を着ているようにしんどいです」重苦しい(重い)だけでは足りない

並べて分かったのは、二つです。

一つは、刺す・裂く・つぶす・焼ける・重い、といった痛みの芯は、一覧の語でかなり言えることです。当事者がそれぞれ思いついた言い方の多くが、一覧のどこかのまとまりに入りました。

もう一つは、一覧に入りきらない言い方があることです。
血管の中をガラスの破片が流れる、体の中で風船が膨らみ続ける、鉛の鎧を24時間着ている。どれも、痛みの「質」に、場所や動きや時間が重なっています。瑠璃さんは風船の話に続けて、「そして限界に近づくほど、身体の中に痛みの逃げ場がなくなっていく。」と書いています3。一覧の一語では、そこまでは運べません。

表現の上手な人と、そうでない人

痛みを伝える工夫を重ねている当事者もいます。
ごまきな子さんは、線維筋痛症の暮らしを漫画『ごまときんつーちゃん』に描いていて、その回の一つ「vs痛みの種類」では、自分が経験した痛みを9つのタイプに分けて絵にしています4。血管の中をガラスの破片が駆け巡る絵もあります。

一方で、編集長はこう話しています。

表現が上手な方もいらっしゃるんですけど、普通の人ってそこまでボキャブラリーが多いわけではない。僕も含めて。

痛みの言葉を自分でゼロから作るのは、簡単ではありません。一覧は、その手前にある言葉の棚のようなものだと、編集部は受け取りました。

よく知られた言い方と、整理された言い方

「血管の中をガラスが流れる」という言い方は、今回集めた中では13人が書いていました(疑いの段階の人なども含みます)。集めた中で、いちばん重なった言い方です。
同時に、よく知られた言い方でもあります。てぃんさんは、ガラスの破片が全身を流れるような痛みを「というものが有名でしょうか」と紹介しています5。2025年のテレビドラマにもよく似た台詞があり、それを見た当事者は「ドラマでも『まるで全身を割れたガラスで刺されたような感じ』とあったのですが本当でした。」と書いています6。

知られた言い方ほど、相手には伝わりやすくなります。
ただ、その言い方に自分の痛みが当てはまらない人もいます。X には、よく聞く表現のような痛みは自分には無いので「この程度で痛いとか言っちゃいけないよなって思っちゃう時がある」という投稿がありました7。

編集長は、医療側で整理された言葉を、もう一つの見方でも受け取っています。

公的な場所で整理されたものがあるんだとしたら、それはある種、存在を認められた痛みなのかなとも取れる。

一覧にある語で言えば、その痛みは「ある」と前から知られている痛みです。自分の言葉が見つからないときに、一覧の語を借りて伝える、という使い方もあるのかもしれません。

100%は伝わらない、という前提

編集長は、痛みを伝えることについて、ある種の諦めがあると話しています。

自分のこの痛みは自分だけのもので、共感はしてくれたとしても、体験として同じ痛みを持っているわけではない。

それでも、伝わる場面はあるといいます。
編集長が体の重さやだるさの話をすると、妊娠中のつわりのつらさを経験した妻には「ああ、あのつらさね」と、一定は伝わるそうです。
女性特有の痛みが男性に伝わりにくいのと同じように、線維筋痛症の痛みも他の人には伝わりにくい。それでも、似た経験を持つ人には届くことがある、と編集長は考えています。

同じ痛みにはならなくても、近い経験や、共通の言葉があれば、少しは届く。
自分の言い方と、知られた言い方と、医療側の一覧の言葉。どれか一つではなく、重ねて使えるのだと思います。

載せた言葉について

ここに載せたのは、ご本人がブログや note、X で公開している言葉だけです。本人が書いていない病名や状態は足していません。
診断がつく前や疑いの段階で書かれた文章、ほかの病名と並べて書かれていて、どの病気の痛みかが分からない文章は、表には使っていません。
掲載について困ることがあれば、お問い合わせ(新しいタブで開きます)からご連絡ください。理由を伺わずに取り下げます。


この記事について

この記事について(稼働・反動・AI の使用・掲載範囲)
読み方ここに並んでいるのは、それぞれ一人ずつの記録です。合わせても、一般的な傾向にはなりません。並べているのは、一人ぶんの具体が積み重なることに値打ちがあると考えているからです。紹介はしますが、評価や順位づけ、助言はしません。読み方について(新しいタブで開きます)
執筆にかかった稼働約1時間(当事者の発信の収集と照合は AI。人は口述と確認)
反動体調への影響は今のところない。集めた情報の裏取りと確認は、今回は出典が広く、目を通すのが少し大変だった
調査範囲2026-09-23・09-27 に取得。note・アメブロ・はてなブログほかの個人ブログ、X(検索で遡れた直近約1か月分)、患者会・学会・公的機関の公開ページ。当事者本人が自分の場に書いたもの、または本人の発言として他者が載せたものを、取得した本文と照合して数えた(71人・199件)。疑い・診断前・他の病名を併記している人も含む。探した範囲の数で、全体の数ではない
AIの使用当事者の発信の収集と、引用の原文照合、口述の文字起こしと下書き。取捨選択と文責は編集部
利益相反なし
掲載範囲当事者の言葉は、ご本人が公開している範囲だけを原文のまま載せています。本人が書いていない病名は足していません。編集長の通院先・薬・診断の中身は書いていません

Sources

この記事が参照した一次情報です。番号は本文中の番号に対応します。参照した日を併記しています。

  1. 日本ペインクリニック学会 用語集 付録17「マギル痛み質問表の痛み表現語」(原典=熊澤孝郎・波多野敬『標準痛みの用語集』南江堂 1999)(新しいタブで開きます)www.jspc.gr.jp参照 2026-09-23
  2. 圓尾知之・中江文ほか「痛みの評価尺度・日本語版 Short-Form McGill Pain Questionnaire 2(SF-MPQ-2)の作成とその信頼性と妥当性の検討」PAIN RESEARCH 28 (2013) 43–53(新しいタブで開きます)www.jstage.jst.go.jp参照 2026-09-23
  3. 瑠璃 note「痛みの風船と暮らしている。線維筋痛症の私から渡したい、見えない痛みのトリセツ」(2026-09-21)(新しいタブで開きます)note.com参照 2026-09-27
  4. 健康365 note『ごまときんつーちゃん~線維筋痛症とうまく付き合う方法~』File.15「vs痛みの種類」(2025-08-05)(新しいタブで開きます)note.com参照 2026-09-28
  5. てぃん アメブロ「線維筋痛症の症状」(2012-08-20)(新しいタブで開きます)ameblo.jp参照 2026-09-28
  6. サッカー抜け忍者マーチンオメガ note「🥷自己紹介🥷全身痛い病のサッカー抜け忍者マーチンオメガです!😺」(2026-02-28)(新しいタブで開きます)note.com参照 2026-09-28
  7. 柚月家(@Yuzu_gbr)X の投稿(2026-09-03)(新しいタブで開きます)x.com参照 2026-09-28

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Authorこの記事を書いた人

なみのま編集部

WEB制作会社 合同会社LOFIR の2名(編集長と、そのつれあい)と、外部のパートナーで動いています。記事は、書いた人とは別のもう1名が公開前に読んでいます。

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