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- 岡田慎平
線維筋痛症・ME/CFS の当事者。WEB制作会社 合同会社LOFIR 代表社員。体調に波がある人の働き方を設計し、記録している。
In 3 lines
- 作業時間が短くなることと、負荷が軽くなることは、同じではない。
- 1日に使える判断の量には限りがある。手を動かす作業を渡したぶん、残ったのは判断だけになった。
- 企業の側に1つ挙げるなら、その仕事が何回の判断を要求するかを見てほしい。
前編(新しいタブで開きます)では、溜まっていた仕事が溜まらなくなるまでを書きました。ここからは、それでも残ったものの話です。
短くなった時間と、軽くならない負荷
いま、複数のプロジェクトを Orca(新しいタブで開きます) で並列に走らせて、判断だけをしていく、というやり方を試しています。これはこれで、とても負荷が高い。肉体的な負荷というより、判断のための精神力です。AIが出してきたものが正しいかフィードバックを返す。AIから「どうしますか」と問われたら、こうしてくださいとか、違いますとか答える。このやりとりを続けることには、かなりの精神的な負荷があります。
作業時間が短くなることと、負荷が軽くなることは、同じではありません。この病気では、体を動かさない頭だけの作業でも症状が出ます。短縮できた時間にそのまま判断を詰め込めば、別の形で削られていきます。
スティーブ・ジョブズ(新しいタブで開きます)が、服を選ぶという判断をしないために黒いタートルネックを着ていた、という話が広く知られています。ただ、伝記に当たるとそうは書かれていません。本人が語っているのは、ソニーの工場の制服を見て同じような結びつきを自社にも持ちたいと思ったこと、日常の利便性、そして自分の署名になるスタイルを持てること、の3つです1。判断の回数を減らすため、という理由づけは後から広まった説明のようです。
それでも、1日にできる判断の数には限界がある、という感覚にはとても同意します。私はそこを、RPGでいう魔法使いのMPだと思っています。総量はレベルが上がれば増えるのかもしれませんが、1日に使える量は決まっていて、使いすぎると枯渇します。
実際、もう判断していられない、今日はここまでだ、と区切って強制的にやめないとだめだ、と思うことが多々あります。どれくらいがちょうどいいのかは、いまも探りながらやっています。
AIをたくさん回すというのは、この MP を使い切る行為です。手を動かす作業を AI に渡したぶん、残ったのは判断だけになったとも言えます。だから、消費が速い。

成果物に説明を求めること
私は長くウェブデザインや制作の業界にいます。デザインを組むとき、営業向けの資料を作るとき、なぜその文字サイズなのか、なぜその色なのか、なぜその順番でそのボタンの大きさなのか、説明できることが新人の頃から重視されてきました。私自身も後輩に言ってきたことです。お客さまに聞かれたら答えられないといけないし、根拠がなければ意図したものではない、感覚でやっている仕事だ、と。品質を高める手法として、とても効果的だったと思います。
ところが、AIでデザインや資料が出せるようになると、そのロジカルに組み上げていくステップが存在しません。「これを作って」と言えばポンと出てきます。こういう意図でこの色にしています、という説明は後付けでできますが、その積み上げの上にアウトプットが乗っているわけではない。新人が何年もかけて積み上げてきたところを、AIが先にやってしまっている。
もちろん、プロンプト(新しいタブで開きます)の段階で設計を細かく立てるやり方はあります。それでも、評価する側が制作者に説明を求めるということが、いまの時代に本当に正しいのか。そこは考えないといけないなと思っています。この論点は、ポッドキャスト「読んでみてはラジオ」の「『ロジカルであれ』の功罪」という回を聴いて考えたことでもあります2。株式会社Right Design 代表の小川貴之さんと、株式会社SmartHR 代表の芹澤雅人さんによる番組です。
説明を組み立てる作業も、判断と同じで MP を使います。成果物が同じなら、そこは省ける余地があるのではないか、とも思います。
働くと決めた人が、働き方を設計できること
AIを使えば働ける、という話をしたいのではありません。ここに書いたのは、働くと決めた私が、自分の働き方を自分で設計し直せた、という範囲の話です。AIを使って働け、ということではないけれど、AIを使った働き方の提案はしていくべきだと思っています。
自分の体力や精神力をなるべく使わずに仕事を回して、自分はしっかり休む。休みながら対価もいただく。もちろんアウトプットの品質には責任を持ちます。それでも手を動かす部分の大半が圧縮できるのだとしたら、気持ちの面でも、体力の面でも、自己肯定感という面でも、変わるところがあるはずです。
そして、これは働く側だけでできることではありません。企業の側がそういう働き方とAIの活用を認めて、成果を出していける環境をつくること。仕事の回し方を考えること。AIを使ってオペレーション(新しいタブで開きます)していく人にきちんとお給料を払うために、ビジネスモデル(新しいタブで開きます)を設計すること。その仕方で回せる仕事を獲得して、お客さまに価値を提供し、対価をいただいて、働く人に還元していくこと。取り組むべきことは、そちら側にも同じだけあります。
企業の側に1つだけ挙げるとすれば、その仕事が何回の判断を要求するかを見てほしい、ということです。判断の回数が読めていれば、当人は自分の MP に合わせて配分できます。読めない仕事は、体調に波がある人にとっていちばん危険な仕事になります。
そういう働き方や仕事の作り方に共感してくれる企業や団体が、この「なみのま」を見て、求人を出したい、うちの考え方を掲載して求職者とのマッチングを深めたい、と思ってくれたらうれしいです。一般の方にも、ハンデのある方にも見てもらい、つながりが増えていったらと思います。
Sources
この記事が参照した一次情報です。番号は本文中の番号に対応します。参照した日を併記しています。
この記事について
| 執筆にかかった稼働 | 約30分(公開後の確認まで) |
|---|---|
| 反動 | ほとんど感じていない。ほぼ一人で完結する内容のため。音声入力でたくさん話したぶん、少し疲れた感覚はあった |
| AIの使用 | 音声入力の文字起こしと下書き。校正AIが書き換えたテキストではなく、認識された生のテキストを素材にし、既知の誤変換だけを辞書で機械的に直しています。取捨選択と文責は編集部 |
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