特集|線維筋痛症・ME/CFS と、働き方

Report稼働設計 読了 5分

手帳のない人が雇用率に入るかもしれない。まだ決まっていない

手帳のない難病患者を実雇用率に算定する方向が議論された。ただし決まってはいない。

  • なみのま編集部調べもの・構成
書類のトレイが2つ。片方には紙が入っていて、もう片方は空。どちらにも入っていない紙が1枚、外に置かれている
制度の中にいる人と、外にいる人
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In 3 lines

  • 手帳を持たない難病患者について、個別に就労困難性を判定し、まず実雇用率に算定できるようにする方向が、国の研究会で議論された。
  • ただし報告書には賛成と慎重の両方の意見が載っていて、結論は「引き続き丁寧に議論を進めていくことが必要」。制度を作ると決まったわけではない。
  • そして線維筋痛症も ME/CFS も、指定難病にも障害者総合支援法の対象疾病にも入っていない。編集部が一覧そのもので確認した。

障害者雇用率の制度に、障害者手帳を持たない難病患者を含める方向が、国の研究会で議論されました。

ただし、決まったわけではありません。
報告書には賛成の意見と慎重な意見の両方が載っていて、結論は
引き続き丁寧に議論を進めていくことが必要」です。

そして、この記事を読んでいる方に関わることを先に書きます。
線維筋痛症も、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)も、いまのところ
「難病」の制度の対象疾病に入っていません。

いま、手帳のない人はどこにいるか

先に、いまの制度の形を整理します。

障害者雇用促進法の「障害者」には、「その他の心身の機能の障害」として
難病による心身の機能の障害も含まれ、職業リハビリテーション・差別の禁止・合理的配慮の提供義務については、
難病患者もこれまで対象とされてきました

外れているのは、雇用義務の対象のほうです。

手帳の有無で、いま何が変わるか
手帳がある手帳がない難病患者
職業リハビリテーション対象対象(これまでも)
差別の禁止・合理的配慮の提供義務対象対象(これまでも)
雇用義務(法定雇用率)の対象対象対象外
実雇用率への算定算定される算定されない

雇用義務の対象は「身体障害者」「知的障害者」「精神障害者」とされ、原則として手帳の所持者に限るとされています10
報告書は、その理由を「対象範囲が明確であり、公正性、一律性が担保されることが必要である」からだとしています。

なお、障害福祉では扱いが違います。障害者総合支援法は難病患者等を「障害者」と位置づけ、
対象疾病(令和7年4月時点で376疾病)であれば、手帳が無くても障害福祉サービスの給付対象になりえます。
同じ「手帳がない」でも、福祉と雇用で線の引き方が違います。

何が議論されたか(事実)

2025年10月、厚生労働省の「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」(第8回)で1
事務局から次の方向が示され、議論されました。

  • 手帳が得られていない難病患者について、本人からの申請により、医師の意見書等も勘案しながら、個別の就労困難性(職業生活への「制限」の程度)を判定する
  • 一定水準にある場合、まずは実雇用率において一定の算定を可能とする
  • その上で、施行状況を注意深く見ながら、さらに雇用義務の在り方を検討していく

「実雇用率への算定」と「雇用義務の対象」は段階が分かれていて、先に検討されているのは前者だけです。

書式の入っていない申請書と、封をした封筒と、まだ押されていないゴム印が並んでいる
本人からの申請と、医師の意見書。判定の仕組みは、まだ決まっていませんイラスト|編集部(AI生成)

判定基準の参考として、報告書には次が挙がっています。

疾患による自己管理(休憩、服薬等)の必要性、疲れやすさや体調の不安定性等による仕事内容や 働き方の制約や、通勤の困難性など

判定の方法として示された3つの案

報告書3には、判定方法の「粗いイメージ」として3案が載っています。どれになるかは未定です。

示された3つの判定案と、その材料
何を材料にするか
案1(1) 難病に罹患していることが分かる診断書 + (2) 支援職によるアセスメント(易疲労性・痛み・免疫力低下等を想定)
案2(1) 難病の医療費助成の重症度判定(認定時に使う「診断書(臨床調査個人票)」をベースに想定) + (2) 支援職によるアセスメント
案3案2 + (3) 国が設置する審査委員会(難病指定医・就労支援関係者・学識経験者等を想定)による合議

人数の試算

厚生労働省は、実雇用率算定の対象となりうる人数の機械的な試算として、
約2,800人〜約65,400人という幅のある複数の試算を示しています。条件の設定で、これだけ動きます。

報告書の結論は「引き続き丁寧に議論」

報告書には、両方の意見が書かれています。

賛成側は「平成24年から10年以上にわたり引き続きの検討事項とされてきており、
今回は方向性を示して具体的な制度設計に入る時期にきている」。

慎重側は「現時点においては具体的な判定基準等の仕組みが明らかでなく、実雇用率の算定の対象者についても、
試算によって開きがあるため、個別判定制度を設けることの是非の判断はできず、引き続き慎重な検討が必要」。

そのうえでの結論が、これです。

就労困難性の個別判定のための判定基準等の仕組みについて、更なる調査研究等も併せて進めながら、 手帳を所持していない難病患者の個別判定制度の創設及び実雇用率算定の妥当性について、 引き続き丁寧に議論を進めていくことが必要である。

線維筋痛症と ME/CFS は、いまどこにいるか

編集部で、2つの一覧そのものを確認しました(2026年9月13日)。

線維筋痛症と ME/CFS が、2つの一覧に載っているか
一覧線維筋痛症ME/CFS
指定難病(厚生労働省・令和8年4月時点・告示番号1〜348)[^6]載っていない載っていない
障害者総合支援法の対象疾病(令和7年4月・376疾病)[^7]載っていない載っていない

ME/CFS は、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類では神経系の疾患に分類されています8

どちらも「難病」と呼ばれながら、難病の制度の中には入っていません。 これが今回の議論に効きます。

  • 案2と案3は、難病の医療費助成の重症度判定(臨床調査個人票)をベースにすると書かれています。医療費助成の対象でなければ、この入口には立てません。
  • 案1は「難病に罹患していることが分かる診断書」なので、条件が違います。

どの案になるかは決まっていません。
ですので、線維筋痛症・ME/CFS が対象に入るかどうかも、この時点では分かりません。

なお、ME/CFS については、指定難病への指定や研究の促進を求める請願が、
衆議院・参議院に繰り返し提出されています9

調査に答えた4,523人の内訳

この議論のもとになっている JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)の調査は、
難病患者本人への 回答数 4,523人 のアンケートです11

手帳の取得状況

JEED 調査に答えた4,523人の、手帳の取得状況
人数
手帳を持っている1,025人(22.7%)
手帳を申請して、不認定だった71人(1.6%)
手帳を申請していない3,410人(75.4%)
無回答17人(0.4%)

報告書が「手帳所持者と同等以上に困難を有している者が多い傾向」としているのは、
この71人のことです。制度の見直しは、ここを根拠にしています。

難病の診断・指定の状況(複数回答可)

同じ4,523人の、難病の診断・指定の状況(複数回答可)
人数
指定難病の診断があり、医療受給者証もある3,835人(84.8%)
指定難病の診断はあるが、医療受給者証がない341人(7.5%)
難病法・障害者総合支援法で指定されていない難病の診断がある223人(4.9%)

線維筋痛症と ME/CFS は、いちばん下の行に入ります。
4,523人のうち 223人(4.9%) です。

わかっていないこと

この記事の時点で、次のことは決まっていません。

  1. そもそも制度を作るかどうか。 報告書は「是非の判断はできず」「引き続き丁寧に議論」と書いています
  2. 判定の方法。 3案が示されていますが、どれになるか、別の形になるかは未定です
  3. 対象になる疾患の範囲。 疾患名の一覧で決まるのか、就労困難性の判定で決まるのかも含めて未定です
  4. 施行日。 「2027年(令和9年)の関連法改正を目指す」という報道はありますが、報告書に施行日は書かれていません
  5. すでに働いている人が対象になるか。 報告書には「施行日以後の採用者を算入可とする、事業主単位の上限を設ける等の方策を検討することも考えられる」と書かれている段階です
  6. 線維筋痛症・ME/CFS が対象に入るかどうか

「入る」と書いている記事があれば、それは一次情報ではありません。
制度の記事は、必ず発行元の資料そのものに当たってください。
この記事の末尾に、編集部が実際に見た資料を並べてあります。

次に見るところ

研究会は2026年1月29日の第13回で報告書(案)を議論し2
その報告書は2026年4月20日の労働政策審議会障害者雇用分科会(第137回)に報告されています4

議論の場は、いまこの分科会に移っています。
2026年9月15日の第142回の議題が「障害者雇用率制度等の在り方について」です4

ここに動きがあれば、この記事を更新します。 更新した日付は記事の下に残します。

一覧の確かめ方(編集部の作業を書いておきます)

「一覧に載っていない」は、載っているものより確かめにくいので、やり方を書きます。

一覧の全文を取得し、すでに指定難病・対象疾病だと分かっている病名が、その一覧に実際に入っているかを
先に確かめました(潰瘍性大腸炎・パーキンソン病・クローン病・ベーチェット病・全身性エリテマトーデスなど)。
それらが全部見つかることを確認したうえで、線維筋痛症と筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群を探し、
どちらも1件も見つからないことを確認しています。

この手順を踏まないと、「一覧のページが取れていないだけ」を「載っていない」と読み違えます。
実際、最初に見たページでは既知の指定難病も見つからず、一覧の本体ではありませんでした。


この記事について

この記事について(稼働・反動・AI の使用・掲載範囲)
この記事の性質事実の記述のみ。評価・予測・見通しは書いていません
一次情報の確認2026年9月13日 時点(末尾の資料を、編集部がその日に1本ずつ開いて確認しました)
執筆にかかった稼働口述と確認 約30分(編集長)/一次資料の取得・読み取り・構成=編集部(AI を使用)
反動なし
AIの使用一次資料の取得と要約の下書き。資料の読み取りと文責は編集部
監修なし(制度の解釈は書いていません)

Sources

この記事が参照した一次情報です。番号は本文中の番号に対応します。参照した日を併記しています。

  1. 厚生労働省「第8回 今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(資料)」(令和7年10月2日)(新しいタブで開きます)www.mhlw.go.jp参照 2026-09-13
  2. 厚生労働省「第13回 今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(資料)」(令和8年1月29日)(新しいタブで開きます)www.mhlw.go.jp参照 2026-09-13
  3. 厚生労働省「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告書(案)」(第13回 資料1・PDF。この記事の引用はすべてここから)(新しいタブで開きます)www.mhlw.go.jp参照 2026-09-13
  4. 厚生労働省「労働政策審議会(障害者雇用分科会)」(第137回〜第142回の開催情報)(新しいタブで開きます)www.mhlw.go.jp参照 2026-09-13
  5. 一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会「障害者雇用率に手帳を持たない難病患者を含めていく方向性が示されました」(患者団体による報告)(新しいタブで開きます)nanbyo.jp参照 2026-09-13
  6. 厚生労働省「令和8年4月時点の指定難病(告示番号1〜348)」(新しいタブで開きます)www.mhlw.go.jp参照 2026-09-13
  7. 厚生労働省「障害福祉サービス等の対象となる難病が、369疾病から376疾病へと見直しが行われます」(PDF)(新しいタブで開きます)www.mhlw.go.jp参照 2026-09-13
  8. 国立精神・神経医療研究センター「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)とは」(新しいタブで開きます)mecfs.ncnp.go.jp参照 2026-09-13
  9. 参議院「筋痛性脳脊髄炎の指定難病と研究促進を求めることに関する請願」(第219回国会)(新しいタブで開きます)www.sangiin.go.jp参照 2026-09-13
  10. 障害者の雇用の促進等に関する法律(e-Gov 法令検索)(新しいタブで開きます)laws.e-gov.go.jp参照 2026-09-13
  11. 厚生労働省「第8回 同 資料1:事務局説明資料」(PDF。JEED 調査研究の集計はここ)(新しいタブで開きます)www.mhlw.go.jp参照 2026-09-13

Authorこの記事を書いた人

なみのま編集部

WEB制作会社 合同会社LOFIR の2名(編集長と、そのつれあい)と、外部のパートナーで動いています。記事は、書いた人とは別のもう1名が公開前に読んでいます。

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