特集|線維筋痛症・ME/CFS と、働き方

Record稼働設計 読了 7分

自分に厳しくしているうちは、仕組みを作らなかった(後編)

決めるのではなく、やれない形にしておく。決意はいちばん調子のいい日に作られ、守るのは悪い日だから。

予定表の方眼紙が1枚。そのうちの2つの枠だけが、あらかじめ塗ってある
空いている時間ではなく、埋まっている時間として置く
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  • 岡田慎平

    線維筋痛症・ME/CFS の当事者。WEB制作会社 合同会社LOFIR 代表社員。体調に波がある人の働き方を設計し、記録している。

In 3 lines

  • 決意は、いちばん調子のいい日に作られる。守るのは、調子の悪い日。だから決めるのではなく、やれない形にしておく。
  • 「しなくてもいい時間」の枠を週に置いた。やってもやらなくてもいい枠があるだけで、気持ちがかなり楽になった。
  • 「できるところまででいい」は動きにくい。「ここまでが100%です」と線を引いて渡されると、そこで終われる。

前編では、なぜ私が長いあいだ仕組みを作らなかったのかを書きました。
自分にできてしまう間は、仕組みを作る理由が発生しないこと。
会社員だったころ、時短勤務の部下に対しても同じことをしていたこと。

なぜ作らなかったのかは前編に書きました。

この回は、いま何をしているかです。 前編を読んでいなくても、ここだけで読めます。

決めるのではなく、できない形にする

「今日は無理をしない」と決めたことは、何度もあります。
朝起きて、午前はしんどいから午後から始めよう、と決める日もあります。
決めること自体は、できます。

守れないのは、そのあとです。

やれている最中に、自分でやめる決断をするのが、いちばんしんどい。
また動けなくなるかもしれないという不安があるので、
動ける日には、動けるうちに片付けたくなります。

もう一つあります。決める日と、守る日で、基準そのものが違うことです。
体調のいい日の頭と、悪い日の頭では、同じ物事の見え方が変わります。

具体的に書きます。
調子のいい日に「返信は1日5件まで」と決めるのは、簡単です。5件ならいけるだろう、と思えます。
本当にだめな日は、1本も返せません。 画面を見るのがつらいし、文字が頭に入ってきません。

では悪い日を基準にすればいいかというと、そうすると仕事が回らなくなります。

だから、「無理のない範囲」をひとつ決めるのは、とても難しい。
いい日の基準と、悪い日の基準を、両方持っておくことになるかもしれない、と最近は思っています。

そのうえで、いま採っているのは、決めるのではなく、やれない形にしておくというやり方です。

上限を、予定表に先に入れてしまう。
空いている時間ではなく、埋まっている時間として置きます。

終わりの時刻を、自分では動かせないものにする。
人と約束する、外の予定を後ろに置く。区切りが外から入ってくると、途中でも止まれます。

依頼の受け口を非同期にする。
その場で返事をしなくてよい形にしておきます。

「しなくてもいい時間」の枠を作る

これは最近やってみて、いちばん効いたことです。

仕事をしてもいいけれど、しなくてもいい時間を、あらかじめ週に置いておきます。

そこに入れるのは、今日やらなくても困らないものです。
事業の棚卸し、領収書の整理のような軽い作業、振り返り、AI との壁打ち。
5分で終わる振り返りを、1時間の枠にしてあります。
1時間ずっと振り返るわけではありません。幅を持たせておくためです。

この枠は、やっても、やらなくてもいい。
体調が悪い日は、そのまま諦めます。先送りしている、と言えばそうなのですが、
諦めていい枠がある、というだけで、気持ちがかなり楽になりました。

そして、調子のいい日にここが回ると、質が違います。
事業のことや、自分の仕事のことを考えるのは、元気なときのほうが前向きになれますし、
時間に余裕があるぶん、腰を据えて考えられます。

上限を先に決めて進めた例

通常なら3か月ほどかけて進める規模のウェブサイト制作を、
1日2時間・週4日と先に決めて進めたことがあります。
1日あたりの最長は、一度も2時間を超えませんでした。
この案件のことは、別の記事に詳しく書きました

この案件のことは別の記事に詳しく書きました。

ただし、納品の翌週に2日寝込みました。
上限を守っても、締切の前後には反動が出ます。
上限は、反動を消す道具ではありませんでした。

1日で見るか、月で見るか

上限を決めると、1日にできる量は減ります。これははっきり減ります。

ただ、同じ時期を月でならしたときには、前より進んでいました。
崩れて止まる週が減ったぶんだと思っています。

これを「長い目で見ればいい」とは書きません。
締切のある仕事に、長い目はありません。
書けるのは、この案件では、測る窓の長さを変えたら数字の向きが違って見えた、というところまでです。

相手の側に何が起きるかは、別の記事に書きました。

仕事を頼む側・任せる側に、私が助かった形

ここから先は、私が実際に助かった形です。こうすべきだという話ではありません。

返事の速さを、状態の目安にしないでいただけると助かります。
返事が早い日は、たいてい元気な日です。仕事の優先順位の話ではありません。

ただ、ここは最近ねじれてきています。
メールやチャットの返信は AI に任せられる部分が増えてきたので、
体調と返信の速さが、前ほど連動しなくなりつつあります。

締切を、日ではなく週で置いていただけると、同じ量が入ります。
「水曜まで」だと、水曜が悪い日だった時点で遅れます。
「今週中」だと、動ける日に寄せられるので、結果として同じ量が終わります。
私も、お受けするときは「この週で」とお答えするようにしています。

「できるところまで」ではなく、「ここが100%」

「無理しないで」と言われても、無理の線は自分では引けません。
そして、「できるところまででいい」も、実は動きにくい言われ方です。

そう言われると、全部やって返したくなります。
8割で出すときには「8割までしかできませんでした」と書くことになります。
受け取る側は「よく頑張った」と言ってくださるのですが、
任された側には、全部できなかった、という気持ちだけが残ります。

「ここまでが100%です」と線を引いて渡していただけると、そこで終われます。
その先は、時間と体力に余裕があればやるおまけにしていただく。
超えるべき線と、超えなくていい線が分かれていることが、いちばん助かります。

これはたぶん、体調に波があるかどうかとは関係なく効きます。
お互いの期待を、先にそろえておけるからです。

見積もりには、出した日の体調が入っている

見積もりも同じです。

調子のいい日に「この仕事なら3日で終わりそうだ」と出したものが、
やってみたら体調が落ちて、3日では終わらない。
逆に、悪い日に出した見積もりは気持ちがネガティブなぶん多めになり、
実際にはもっと短く終わることもあります。

では多めに出しておけばいいかというと、そうはいきません。
納期が長ければ頼みづらくなりますし、
同じ人に頼んでいるのに見積もりが毎回ぶれると、頼む側は予定を立てられません。
「繁忙期なので」と説明はできますが、説明で埋まる話ではないと思っています。

いまやっているのは、見積もりの精度そのものを上げにいくことです。

案件ごとに、かかった時間だけでなくそのときの体調まで含めて記録を残しています。
溜まった記録は、AI に分析させています。
自分にとってちょうどいい分量がどのあたりなのか、中央値がどこなのかは、
手で数えるより、そちらのほうが正確でした。

いまは見積もり自体を AI に出させて、こちらが直す形にしています。
自分の成果物と仕事の進め方を手順として渡すことを繰り返すと、精度が上がっていきます。
ウェブ制作や修正はもちろん、企画や設計のような上流の仕事でも同じでした。

結果として、見積もりの精度が上がり、見積もりを作ること自体にかかる時間も減りました。

いまも、調子のいい日には自分でやってしまいます。
それでも、やれない形にしておいた枠のぶんだけは、崩れずに残っています。

前編はこちらです。


この記事について

この記事について(稼働・反動・AI の使用・掲載範囲)
読み方これは少数の実例から組み立てた方法です。一般に当てはまる手順ではありません。それでも書くのは、実際にやった記録が積み重なることに値打ちがあると考えているからです。やったことは書きますが、助言はしません。読み方について(新しいタブで開きます)
執筆にかかった稼働口述と確認 約45分(編集長。前編・後編あわせて)/構成と下書き=編集部(AI を使用)
反動少しあり。長めの記事なので、疲れが残った
AIの使用下書きの作成と構成。取捨選択と文責は編集部
利益相反なし(提供・報酬は受けていません)
着想の出所佐渡島庸平『編集者のフィードバック』(2026-05)/ポッドキャスト「ニュースコネクト」2026年9月のゲスト回。逐語の引用はしていません(趣旨を編集部の言葉で書いています)
掲載範囲編集長自身の記録です。会社員だったころの部下・取引先を特定できる情報(社名・業種・時期・人数)は書いていません

Authorこの記事を書いた人

岡田慎平

線維筋痛症・ME/CFS の当事者。WEB制作会社 合同会社LOFIR 代表社員。体調に波がある人の働き方を設計し、記録している。

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