In 3 lines
- キャリアアップしたいと言っていたので、タスクやプロジェクトは絞らなかった。ここはうまくいったと思っている。
- 引っ越しで勤務時間がさらに短くなるなど、条件は何度も変わった。そのたびに選択肢を並べて話し直した。
- できなかったのは制度にすることだった。評価もキャリアも未整備で、マンパワーで埋めていた。埋めていたものは、担当者が変われば残らない。
いまの私は、体調に波がある側です。
けれど以前は、人を管理する側でした。ウェブ制作の会社でマネージャーをしていました。
そのとき、子育てで時短勤務をしている部下がいました。
この記事は、そのときに私がやったことと、やれなかったことの記録です。
うまくいったと思っていることも、いま振り返って心残りなことも、両方書きます。
前提(事実)
ウェブ制作の会社で、私はマネージャーでした。
部下は女性で、子育てのために時短勤務をしていました。
書くのは、子育てと時短勤務のことだけにします。
個人が特定されないようにするためでもありますし、
上司と部下の関係の多くに当てはまる形にしたいからでもあります。
制度(育児・介護休業法や社内規程)の解説はしません。会社によって中身が違います。
仕事は、絞りませんでした
彼女は、キャリアアップしたいとずっと言っていました。
だから、タスクやプロジェクトを絞りませんでした。
時間が短いからという理由で、簡単な仕事だけを渡すことはしませんでした。
理由は単純で、そうすると時短勤務を理由にキャリアが止まるからです。
それは自分の考えとして、認められませんでした。
ここは、いま振り返ってもうまくいったところだと思っています。
少なくともモチベーションの面では機能していました。
時短勤務でもキャリアを上げていける、という見通しがあること自体が効いていたと思います。
量を減らすのは、いちばん簡単な「配慮」です。
そして、渡す側にとっていちばん楽な配慮でもあります。
条件は、何度も変わりました
時短勤務は、一度決めたら終わりではありませんでした。
忙しさには波があります。
保育園に入るまでの時期、3歳前後、保育園から小学校に上がるタイミング。
そのたびに、生活のほうの形が変わります。
いちばん大きかったのは、家庭の都合で引っ越すことになったときです。
通勤の条件が変わり、勤務できる時間が、それまでよりさらに30分から1時間短くなることになりました。
そのとき、選択肢を並べて話しました。
- 仕事の量を減らすか
- 持ち帰って自宅でやる形にするか
- リモート勤務の日を増やすか
- プロジェクトの中での立ち位置を変えるか
立ち位置の話がいちばん難しかったです。
マネージャーやリーダーの職務にもつけてあげたい。
けれど、その勤務時間で責任のある役割を持つのは難しい、という現実もあります。
時間と責任をどう釣り合わせるか。何度も何度も話しました。
一度決めて終わりになった記憶は、ありません。
一人の話には、なりませんでした
ここがいちばんしんどかったところです。
その人ひとりを、特別扱いすることはできません。
話はチーム全体につながり、部署につながり、場合によっては会社全体につながります。
一人に対して例外を作れば、その例外の理由を、他の全員に説明できなければなりません。
実際、他のメンバーから指摘が入ることはありました。
- あの人は楽な案件ばかり任されているのではないか
- あの人には厳しいことを言わないのではないか
- 給与や勤続年数との釣り合いはどうなっているのか
繁忙期はとくにそうでした。
プロジェクトが佳境に入って、みんなが遅くまでやっている中で、
時短勤務の人は帰らざるを得ません。
表面上は、みんな「いいよ」と言います。 実際には、そうとは限りません。
そして、彼女自身がいちばんそれを感じていました。
メンバーに対して引け目を感じていましたし、
自分の時間の中でできることを最大限やろうとしていました。
飲み会には出られないので、ランチ会をやりました。
彼女なりに、コミュニケーションの場を作ろうとしていました。

軋轢がなるべく生まれないように心がけてはいましたが、完全になくなることはありませんでした。
制度が無いと、マンパワーで埋めることになります
当時の会社には、時短勤務そのものの制度はありました。
無かったのは、その先です。
- 時短勤務の人を、どう評価するか
- 時短勤務の人が、どうキャリアアップしていくか
ここが未整備でした。
だから、マネージャーの裁量で埋めることになります。
1on1 で個別に調整し、評価査定のときに調整し、
他のメンバーに配慮の理由を伝えて回る。それを続けることになります。
管理職として、これはしんどいです。
同時に、上からは成果を求められます。
MBO のような目標設定の仕組みがあると、目標をどう置くかで毎回ぶつかります。
他のメンバーと比べて、達成難易度も貢献度も低く見積もられやすい。
会社の側から見れば、時短勤務でも社会保険を含めた人件費はかかります。
それに見合う成果が出ているかは、シビアに見られます。
いちばん難しいのは、数字と、メンバーからの印象のギャップを埋めることでした。
制度を使っていても、そこは埋まりません。
私はマネージャーとして、会社の会議で、
多様な働き方を受け入れられる仕組みが要るということを、折を見て言い続けてはいました。
それでも、動かせませんでした。
一人のマネージャー、一人のプレイヤーでは、組織全体は動きません。
うまくいかなかったこと
制度や仕組みを作るところまで、持っていけませんでした。
当時の私は未熟でしたし、そこまでの力もありませんでした。
これは、いまでも心残りです。
もうひとつ、当時うまく言葉にできていなかったことがあります。
制度があればいい、という話でもありません。
制度を盾にして「私はこの制度だからいい」という形になってしまうと、それはそれで回らなくなります。
必要だったのは、たぶんこういう状態です。
全員が制度の中身を理解していて、自分もいつか当事者になりうると分かっていて、
そのうえで、いろいろな働き方があることを受け入れている。
腹落ちした状態でメンバーがプロジェクトに向かえる環境。
それを作るのは、マネージャーひとりの仕事ではありません。会社の設計の仕事です。
いま改めて、そう思います。
いま、人に仕事を頼む側にいる方へ
ここから先は、私ができなかったことです。こうすべきだという話ではありません。
量を減らす前に、選択肢を並べて話す。
減らすのは最後の手段で、しかもいちばん楽な手段です。
持ち帰る、リモートを増やす、立ち位置を変える、締切の置き方を変える。
選択肢を本人と並べたかどうかで、その後がだいぶ変わりました。
条件が変わるたびに、話し直す。
一度決めた形は、生活のほうが変われば合わなくなります。
評価の物差しを、先に決めておく。
時間あたりで見るのか、成果で見るのか。
あとから調整すると、調整そのものが不公平に見えます。
そして、制度にする。
マンパワーで埋めているうちは、担当者が変わった時点で消えます。
私が埋めていたものは、私がいなくなれば残りませんでした。
—
いま私は、体調に波がある側にいます。
当時の自分が何を見ていなかったのかは、こちら側に来てから分かりました。
同じことを自分に対してもやっていました。
この記事について
| 読み方 | これは少数の実例から組み立てた方法です。一般に当てはまる手順ではありません。それでも書くのは、実際にやった記録が積み重なることに値打ちがあると考えているからです。やったことは書きますが、助言はしません。読み方について(新しいタブで開きます) |
|---|---|
| 執筆にかかった稼働 | 口述と確認 約30分(編集長)/構成と下書き=編集部(AI を使用) |
| 反動 | なし |
| AIの使用 | 口述の文字起こしと下書きの作成。取捨選択と文責は編集部 |
| 利益相反 | なし |
| 掲載範囲 | 編集長が会社員だったころの記録です。本人が特定される情報(社名・時期・人数・体調に関すること)は書いていません。書いているのは、子育てによる時短勤務という条件までです |
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